硯で墨が磨れない時は

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硯の扱い方〜硯の基礎知識③〜

あなたの硯で墨は磨れますか?

硯を使ってみよう〜硯の基礎知識②〜で最近の書道セットについている硯は石ではなくPP製と述べた。もしPP製でなく石の硯で何十年も前のものでしばらく使っていなかったものだとしたら、果たして十分に墨が磨れたであろうか。もし十分に磨れないようであるなら、硯の「墨堂(岡とも言う)」が墨の煤と墨の膠で目詰まりを起こしている可能性がある。学校や書道教室などで使って十分に洗うことなくしまってしまえば、当然墨は固まり、目詰まりをおこす。特に学校では洗い流すことはせず、紙や布などで拭くだけで道具は家で洗うよう指導しているようだ。墨や膠が固まることでひどい場合は墨が擦れないだけでなく、硯がひび割れを起こすなどのダメージを与えかねない。

硯を洗ってみよう

硯は「鋒鋩(ほうぼう)」と言って細かな凹凸がやすりの役割を果たすことで墨が磨れるのである。その「鋒鋩」の凹凸が墨の煤や膠で目詰まりを起こしている状況を解消するにはどうすれば良いか。膠は牛や鹿、魚などの皮・骨・腱などのコラーゲンを煮て作られていることから70℃のお湯で溶解する。70℃のお湯に2〜30分程度浸し柔らかいスポンジなどで丁寧に洗ってみよう。自分は百均で買ったメラニンスポンジで洗っている。これを何度か繰り返し洗うことで大方改善しよう。

硯の目立てをしてみよう

これを繰り返してもダメなら最終手段の硯の「目立て」である。要は硯の研ぎである。硯を洗うにしても、目立てをするにしてもご自身の道具なので自己責任でお願いしたい。自信のない方や高価な硯で傷つけたくない方は専門家に依頼するのが良いであろう。

硯の「目立て」であるが主に三通りの方法がある。

⒈クリーム状の研磨剤を使用する。

⒉耐水ペーパーを使用する。

⒊砥石用の「泥砥石」を使用する。

あるいはこれらを複合的に使う方法であろう。手軽でお薦めなのは⒈のクリーム状の研磨剤を使用するである。これならば台所にある方が多い。いわゆる「クレンザー」である。

まずは70℃のお湯に2〜30分程度硯を浸す。その後クレンザーを要らなくなった歯ブラシにつける。墨を磨るのと同じように円を描くように優しくこする。あくまでも優しくである。歯ブラシで硯を傷つけないためである。隅っこの方もこすった方が汚れが落ちやすい。自分は傷つけるのが怖いので歯ブラシでなく、指先でこすっている。ただ指だとヌメヌメが洗ってもなかなか落ちないのが欠点だが。

クリームクレンザーは百均でも売っているだろうし、この方法でかなり改善されるはずである。

新品なのに墨が磨れない!?

私も経験したのだが、買ったばかりの硯なのにどうも墨が磨れない。とりわけ中国で作られた硯に多いだろう。硯の墨堂(岡)や海(池)に蜜蝋(ワックス)などを塗りたくっていることがある。これは見栄えを良くするために、硯の紋様を浮かび上げらせ高級感を出すために行われているようだ。

この場合も70℃のお湯に2〜30分浸し、落ちないようなら、目立ての時のようにクリームクレンザーでこすれば、蜜蝋は落ちてくれ、楽しい墨すりが出来ることだろう。

硯をどこに保管していますか?

硯を洗うにしろ、目立てをするにしろ、そのあとは十分乾燥させることが肝要で、保管場所についても湿気の多い押入れに段ボール箱などで保管するのはナンセンスである。万が一墨の煤や膠分が残っていた場合、カビの原因となりうる。最も懸念されるのはこのカビが石に食い込んでいき、ひび割れの原因となることである。一番いいのは机に出しっぱなしなのだが、せめて湿度の酷くない引出しにしまっておくのがいい。

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